『アンストッパブル』

暴走した貨物列車をベテラン機関士と新米車掌の二人が止める。


トニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演の乗り物パニック映画。実話を元にしているというけれども、相当に脚色はしているような気がする。映画のプロットはこれでもかというくらいの王道展開で、小さなミスで貨物列車が暴走しだして、それが大事に発展する……というもの。貨物列車の積荷がとんでもないもの、というのもお約束。


よくあるストーリーを、どうテリングしていくかがこういう映画で一番重要になってくる。暴走機関車ものの映画はそれこそ史上最初の映画である『ラ・シオタ駅への列車の到着』からしてその性格があるが、今作はそれを現代的な語り口と王道展開で、正面から勝負を挑んで勝利している形になっている。


良いと思ったのは、小さなミスが重なって機関車が暴走して、このまま暴走が続くと起きる大惨事が明示されること。そして、暴走機関車を停車させようと色々と手を尽くすが、それがことごとく失敗して、使命感を持った二人の男にすべてが委ねられる……という展開は上手いの一言。会社の上層部の不適切な対応とか、時々差し挟まれるニュース映像とか、要所要所を踏まえた描写が光る。


シナリオとしては溶接工主任のネッドの役割が弱かったかなぁと思う。最後に列車に追い付くわけだけれど、彼のキャラクターが良いだけにもう一つくらい見せ場が欲しかった。あと、最後の最後にもう一つ危機的状況を用意したほうがよかったように思える。大カーブを曲がったあとは、もう停車させるだけの展開になるので。それと、鉄道局のスコットさんも、もう少し会社の上層部に注意を与えるとか、そういう描写がほしかったかな。


暴走列車が止まると、そこで記者会見がセッティングされるラストは、アメリカってそうなのか〜と興味深かった。ラストに後日談がキャラごとに出てくるのも余韻があって良い。上映時間も90分と短く、切れ味鋭い作品になっているのでオススメ。