『ゴーストライター』

ゴーストライター [Blu-ray]

ゴーストライター [Blu-ray]

近くの名画座で鑑賞。『ゴーストライター』と『マネーボール』の二本立て。

というわけで、去年公開の映画の中では屈指の傑作と言われていた『ゴーストライター』を観ました!
監督はロマン・ポランスキー。主演はユアン・マクレガーピアース・ブロスナン
元英国首相の自伝を書くことになったゴーストライターが、不慮の死を遂げた前任者の謎と、その背後に渦巻く陰謀に巻き込まれてしまい……というサスペンス映画。僕にとってのポランスキー体験は駄作と名高い『ナインズゲート』しかなかったので、映画作劇には長けているけれども古くさいセンスの持ち主くらいにしか考えていなかったのですが、『ゴーストライター』はもうビックリするくらいの大傑作だったので考えを改めました。
この映画の上手いところは、主人公が前任者の死の謎に立ち入ろうとすればするほど、元英国首相が抱えている謎に踏み込んでしまい、身の危険が増していくという構造にあると思います。この二つの謎の二段構えによって、迷路のような先行きの不明瞭さと不気味さを演出しています。そのことによってポランスキー得意の、良く分からない世界に迷い込んだ恐怖、良く分からないうちに身に危険が迫る恐怖の二つが良く表現できているなと。
映画的な映像テクニックとしては、最後のメッセージが人づてに渡っていくシーンと、何よりラストシーンは素晴らしいの一言。ナビゲーションシステムが、謎の解明に役立つあたりの展開のさせかたも上手かった。役者はピアース・ブロスナンが良かった。007役者としての彼のイメージと、現実の元英国首相トニー・ブレアのイメージが合わさって、一癖も二癖もある美味しい役周りになっていたと思う。
最後に、一つ難点を挙げるとすれば、謎のタネ明かしについてはもう少し良いアイデアがあったのでは、と思う。あの人がアレである、というオチはいかにも取って付けた感があるし、それまでのあの人の行動を思うと「ちょっと説明しきれない部分があるような……」と書きたくもある。でも、直後のラストシーンがとにかく素晴らしい余韻なのであまり気にならないのですが。この辺りはポランスキーが監督力でねじ伏せた感がある。