『居酒屋の世界史』

居酒屋の世界史 (講談社現代新書)

居酒屋の世界史 (講談社現代新書)

久々に良書を読んだという感想。
居酒屋の発展を世界史の中で辿ることによって、貨幣経済がどのようにして農村まで広まったかということを論じる。貨幣がなければ居酒屋というのは成立しづらいし、さらに農村まで居酒屋が広がるには様々な条件が必要だった。ヨーロッパでは酒造りをしていた教会が、宗教改革によって聖俗分離が起きて、都市部に居酒屋が生まれたということ。地方では巡礼者のための宿屋兼居酒屋が出来て、それが貨幣経済の浸透にともなってコミュニティーの中心的な施設になっていった。また、中国では都市に茶館という居酒屋が出たものの、農村までは普及しなかった。韓国では貨幣経済が制限されていたのと、家造酒の文化があったので居酒屋文化が生まれたのが日本統治時代になってからということ。日本では江戸時代末期になって農村まで居酒屋が現れ始めたということが語られている。
近代化のパラメーターとしての居酒屋という視点は斬新で、こういう新書が沢山出るようになればいいなぁと思う。また、採り上げられている時代と地域の範囲が広く、参考文献も豊富なので、この方面を調べる際のとっかかりとしても最適ではないだろうか。