『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

意外! それは案外普通!

「奇妙な」と題名にはなっていますけれど、全然奇妙ではありません。至極まっとうな映画本になっています。

奇妙な漫画家荒木飛呂彦がホラー映画を語り倒すという内容で、ホラー好きの人も非常に納得できるものになっていると思います。特にエクソシストから今日までの話題になった映画はほぼ網羅されているという感じ。日本のホラー映画は『リング』とか『呪怨』とかの超メジャーどころしか紹介されていないので、ここでも洋モノ趣味なのかなと思ったり。

採用されているホラー映画は、そのどれもが「オススメできる」作品です。『13日の金曜日』とか『ゾンビ』のような古典的メジャーどころから、最近の『ホステル』や『ソウ』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』みたいな作品まで。『REC』とか『ハイテンション』とか『アイデンティティー』とかのマニア受けしそうな作品も採り上げられています。

これを読んでみて思ったのは、荒木飛呂彦の映像センスには映画的なものがあるんだなぁということ。JOJOの第三部とかはホラー映画に着想を得たエピソードが沢山あるんですが、そういうのを色々推理するのが面白いところ。岸部露伴はジョニーデップなのか。

あと『プレシャス』がホラーだというのは面白い視点だと思った。あと荒木飛呂彦の真摯さ、クリエイティブな人間は表現を超える表現を希求するところが垣間見えて面白い。右手で漫画を書きながら、左手でこんな本を出してしまう無茶ぶりにも戦慄してしまいます。