ビンが死んだらカンは?

賛辞と警戒交錯、ICPO各国に警戒呼びかけ
読売新聞 5月3日(火)10時24分配信
 国際テロ組織アル・カーイダ指導者ウサマ・ビンラーディンの殺害について、関係国から賛辞と報復への警戒が交錯して聞かれた。

 英国のキャメロン首相は殺害を歓迎しつつ、「これでテロリストの脅威がなくなったわけではない。今後の数週間は特に警戒が必要だ」と述べた。ヘイグ外相は、英国の在外公館に厳戒態勢をとるよう指示した。

 フランス大統領府は声明で「テロとの戦いにおいて重要な出来事」とたたえた。声明は「これはアル・カーイダの終わりではない。戦いは今後も続けねばならない」と強調した。

 国際刑事警察機構(ICPO、本部・仏リヨン)のロナルド・ノーブル事務総長は「ビンラーディンが死んでも、アル・カーイダとその信奉者は残る。彼らは今後もテロを続けるだろう」との声明を発表し、各国に警戒を呼びかけた。

 ドイツ政府報道官も声明で「国際テロはまだ制圧されていない。今後も警戒を続けねばならない」とした。

 ロシア外務省は声明で、「国際的なテロとの戦いで時代を画する機会だ」と評価。ロシアがカフカス地方で展開するイスラム過激組織の掃討作戦が米軍の対テロ戦と同様の「普遍的な重要性を持つ」と自賛した。

湾岸戦争が1990年のことだから、20年という時代の区分の最後としてビンラディンの殺害が起きたことに、僕としては時代のうねりのようなものを感じてしまう。スーパーパワーの間隙を縫って攻撃を与えるという「テロ」の方法論が、これである程度潰えてしまったのではないかなぁと思う。

ビンラディンの殺害によって、激しい報復が起きるかのようなことを言う人がいるけれども、そういう可能性はかなり低いと思う。確かに、現地のアメリカ人が何人か殺されるようなことは起こりうるだろうが、例えば911に匹敵するようなテロも、アラブに原理主義が台頭するという懸念も、どちらかと言えば的外れな考えだ。911の後、アメリカはイラク戦争アフガニスタン増派とかなりやりたい放題だったが、ついぞ911ほどのテロは起きていない。

もはやアメリカの対テロ網は鉄壁と言っていい代物になっている。主要なアルカイダタリバンのメンバーは次々に殺されているし、それに対抗する手段もない。アルカイダは時代遅れの組織として、連合赤軍やIRAのような末路を辿っていくのだろう。アラブ世界においてもテロはもはや意味をなしていないし、「民主化」という超巨大な潮流に対応していくしかないわけで。

この襲撃はオバマ大統領もリアルタイムで観戦していたようだ。ここにアメリカの凄さがあるように思う。オバマの決意がどうとかというよりも、パキスタンの住宅街とホワイトハウスが直接繋がっていたという事実が恐ろしい。ビンラディンは十年近く逃げ回って、よくやったほうだと思うが、彼の末路を観て、その後を辿ろうとアメリカと戦おうと思う人間がどれだけいるのだろう。それほどの力をアメリカは持っているのだということを、誰もが認識しておくべきだと思う。

オバマは「正義を執行した」と言い、それに対する違和感がツイッターなんかを見ていると根強い。でも、逆に言えば、今のアメリカは「正義とは何か?」を決めうる立場にいるということだ。アメリカの行動は一概に「正義」とは思えない。そうは言っても、例えばアメリカの利害を犯す者が一方的に「悪」と断罪される可能性はあり続けると思う。日本人はナーイブなので、確かな「正義」なんか存在しないなんて言いたがる。だけど、いつのまにか僕らが「悪」と指弾されないための処世術くらいは考えておいたほうがいいのでは?

要するに、一つの時代が終わり、また一つの時代が始まるということ。新時代には、また、それに即したルールが生まれるだろう。それが何かということを模索しないまま、古い価値観に囚われていてはダメだと思う。