ナショナル・ジオグラフィック

ミイラの記事が面白かった。ナショナル・ジオグラフィックは購入雑誌ではないのだけれど、何気なく捲ってみると流石に写真が美しいし、文章もよかった。ペルーの女性ミイラの写真は、死者に対する客観的な視点を提供する、細密な絵画のようだ。同誌は自然の写真ばっかり、という僕の先入観を覆すように、今号の特集はワールドカップとサッカーだったし、これなら定期購入しても良いかなと思った。ちなみに言えば自然の写真も美しい。飛ぶペリカンとか、ファンデルワース力で壁にくっつくヤモリとか。ホームページを見ると、一年契約で購読すると、9000円で済むらしい。三年契約では、22950円。ちなみに書店で買えば一冊900円だったように思うので、これは年契約したほうが得なのかも。要熟考。

イタリアの小島でのリゾートという記事で即買い。エスクワイアとイタリアのコラボレーションに外れナシと見ていいだろう。こういう特集の、陽気な日射しと美味しそうな料理の写真を見ると、僕はこんなところでブログなんて叩いてて良いのだろうかと自問自答したくなる。恐ろしく碧い海。日本の海は流動的な金属のようだと思うけれど、イタリアの海は流動的なガラスのようだ。他にも、没頭のカポーティの記事が面白かった。
ソクーロフの『太陽』についての記事は、ちょっと物足りないと思う。この映画は昭和天皇終戦から人間宣言までのストーリーで、昭和天皇イッセー尾形が演じている。天皇は人間になったが、未だに人間であることを許さない人も多い。おそらく、それは具象を見ずに抽象を見ているからだ。そういうわけで、『太陽』という映画については、右翼とかの問題とか、天皇の問題とか、不敬にあたるような映画じゃないんだよとか、そういう視点で語られがちだと思うけれども、映画評として一番良かった『映画瓦版』の記事に比べて、どうしても表層に留まっているように見えた。

相変わらず映画評では最も先鋭的なんだが、特集の『マンソン・ファミリー』についての記事だけは駄目だった。被害者を笑い、加害者を語る(ように僕には読めた)というのは、どうも生理的に受け付けない。マンソンを題材にした人形劇映画を元にした特集なのだが、例えば北朝鮮による拉致を題材にした人形劇映画でも同じように語るのか、南京大虐殺を題材にした人形劇映画でも同じように語るのか。朝鮮人の受難を題材にした人形劇でも同じように語るのかと考えると、不謹慎さと主義主張のアンバランスさが特色の映画秘宝では、如何ともしがたいものがあるかもしれない。『ポセイドン・アドヴェンチャー』の特集は良かった。色々な意味でごった煮で、それが魅力ではある。
デトロイト・メタル・シティ』の作者のインタビューが載っているのは流石。KKKと『国民の創世』についての書評は面白かった。