『ミーン・マシーン』

スカパーで鑑賞。


ミーン・マシーン [DVD]

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【ストーリー】
刑務所に入ることになった元イングランド代表のサッカー選手が、囚人チームを作って看守チームと試合をする。


【見所】
「囚人スポーツ映画」としての体裁は整っているんじゃないかと思う。
へっぽこ囚人チームの練習風景とか良かった。


【感想】
薄味


と、一言で感想を言えばそうなるのかなぁと思った。八百長疑惑でサッカー界から追放された男が、警官への暴行で刑務所に入り、そこで囚人チームを作って看守チームに勝利することで自分を取り戻していく……という内容。監督はバリー・スコルニックという人。この人は英語版のwikiにも項目がないし、この一作しか撮っていない。俳優はそこそこ豪華で、主演のヴィニー・ジョーンズや、ジェイソン・ステイサムなどの『ロック・ストック・ツー・スモーキング・バレルズ』組がちらほら出演している。


囚人がチームを作って看守チームと試合をするって良くある内容で、『勝利への脱出』とか『ロンゲストヤード』と同じだよねぇと思った。この映画は囚人映画と、囚人スポーツ映画の両方のエッセンスを、かなり忠実に取り込んでいる。そして、舞台が刑務所なので顔でモノを言わせるタイプの囚人(と看守)が沢山出てくる。主人公のヴィニー・ジョーンズは一度観たら忘れられない強面だもんねぇ。で、この面子で反則上等の喧嘩サッカーが展開される……と聞けば、誰もが「面白そう!」と思うはずなんだけれど。


これがビックリするほど盛り上がらないんだよね。一番の理由はヴィニー・ジョーンズの無駄遣いにあると思う。この作品でのヴィニー・ジョーンズは、『ロック・ストック・ツー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』のようにアドレナリンを全開にしないキャラなんだよね。妙に物分かりが良いというか、引っ込み思案というか。さらに言えば、元サッカー選手でサッカーのシーンは上手いのだけれど、演技のほうはさすがにそんなに上手くない。だから、ヴィニー・ジョーンズの乱暴狼藉を期待して観ると、かなり微妙な気持ちになると思う。ジェイソン・ステイサムも狂犬キャラなんだけれど、そんなに狂わないし。


そう考えると、この映画をガイ・リッチーが監督したら、どんなに切れ味鋭いものになっただろうと想像してしまう。『スナッチ』でヴィニー・ジョーンズが登場したときの第一声「ボンジュール!」で観客のハートを鷲掴みにしたあのハッタリが、この映画にはないんだよねぇ。

イギリスっぽく階級社会で言えば、「サッカー」を題材にしているのに、労働階級の感覚よりも、上流階級のハイソな感覚を感じてしまった。


ストーリーも、囚人映画のセオリー的なエピソードは描かれているけれども、事務的というか、単に「エピソードとして入れてみました」以上のものが感じられなかった。数々の障害を乗り越えて、主人公が囚人チームを一つに纏めて勝利する……という過程が、描かれているのだけれども、深みがないためにカタルシスが生まれないのは残念だった。この辺りは、ヴィニー・ジョーンズに演技の幅は求められないので、シナリオや演出で改善するべき問題だったはず。


とは言っても、押さえるべき部分は押さえているので、見終わった後味はそんなに悪くなかった。テレビで観るのなら、これで十分と言った感じ。一番重要なサッカーの試合については、反則合戦でよく試合が壊れなかったな〜と思った。笑えたけれども、もう少し練習が試合に生きる描写があっても良かったかも。色々と惜しいと感じさせられる、サッカーで言えば枠外にシュートが行ってなかなか点数が入らない、そんなもどかしい映画だった。