『ガッチャマン』

金をドブに捨てる気持ちで映画館で鑑賞。700円のパンフレットも買ったぞコノヤロー!


 
【ストーリー】
近未来、突如として現れ、地球の半分を侵略したギャラクターと、彼らに唯一対抗できるガッチャマンの死闘を描く。

 

【見所】
ガッチャマンがちゃんと活躍している!
『ローンレンジャー』は『ガッチャマン』の爪の垢を煎じて飲んだほうがいいよ?

 

【感想】
超映画批評の『ガッチャマン』の感想を読んで(ちなみにあっちは100点中4点だった)、ハードルを下げに下げて鑑賞したのが良かったのか、話自体は日本映画の悪しき面で腐臭の漂うものだったけれども、それなりに楽しめる部分もある映画だった。言うほど酷くないです。漫画やアニメ原作のクソ映画としては、まず第一に『デビルマン』が挙げられると思うけれども、あれと比較するのはどうかというくらい、まっとうなダメ映画だと思う。


点数を付けるなら25点。


楽しめる部分は、まがりなりにもガッチャマンが最初から最後まで活躍するところ。これ、本当に『ローンレンジャー』になかった部分で、ヒーロー物はヒーローが活躍してなんぼのもの! という当たり前の最低ラインを改めて確認させられた。僕はガッチャマンにはなんの思い入れもないし、知識で言えば主要キャラと「科学忍法火の鳥」とテーマソングくらいなものだったので、熱烈なファンが思うような不満点を感じにくいという面はあるだろうけれど、それでもガッチャマンがギャラクターと戦っているシーンはテンションが上がった。


でも、観る前はもう悪い予感しかしなかったんだよね〜。そもそも、予告編からして『バトルシップ』のパクリやないか〜! とか、「1千万人を救うために1人を犠牲にするという考えを否定する」みたいな噴飯もののセリフが出てきたり、超映画批評の点数もそうだけれど、購入したパンフレットに監督とSF考証の人の対談が載っていたりと、フラグ立てもいい加減にしろ! と言いたくなるものだった。そもそも、『ガッチャマン』は三池崇史監督が「これを映画化するのなら『ダークナイト』級の規模が必要」と言って断っている(で、代わりにできたのが『ヤッターマン』だった)くらいなわけで、映画化するというのを聞いたときには「正気か?」としか思えなかった。


結果として、楽しめる部分はあったにせよ、映画の質は相当低いです。まず、脚本がダメ。僕は渡辺雄介の脚本で良いと思ったものが一つもないんだよねぇ。『GANZE』とか、あんなに脚本作りやすそうな原作で、よくもまあ、あんなにテンポを殺すような脚本が書けるもんだと逆に感心してしまうほどだったし。たぶん今回の起用も、漫画原作の映画脚本のキャリアを買われてなんだろうけれども、褒められたもんじゃない。


今回で言えば、オープニングの地獄絵図と世界の半分がギャラクターに占領されたという説明から、いきなり日本のそこそこ平和な街並みに舞台が移った時点で、もうアホじゃねーの? と思ってしまった。この人の書く脚本って、設定をストーリーに組み込むことがことごとく幼稚だと思う。「組織」とか、「戦略」とか、「軍隊」とか、デカい概念のものをちゃんと描ける脚本力ある人材が日本にはない。そのわりに、人間関係のいざこざを描くのは妙に手慣れているので、「この話の規模で痴話げんかかよ!」みたいなバカらしさと常に隣り合わせだ。


例えば、イリヤ接触する際に、ガッチャマンたちがパーティに潜入するんだけれど、こんなのお前らの組織だったら堂々と入ればいいだろうが! とツッコミを入れたくなる。あのパーティをしている人たちって、ガッチャマン側の組織の人たちなはずなんだよね。「ヨーロッパを奪還しよう!」って標語が出ているし。そもそも『バトルシップ』の歯車みたいなのが大破壊したあとで、なに暢気にパーティしてんの? みたいな。ちょっと考えただけでありえない描写が山のように積まれてしまう。ベルクカッチェが日本に来たことが分かる場面も、ベルクカッチェがギャラクターでどんな役周りの、どんな悪党なのかの説明もない。ここ、普通なら「ヨーロッパ戦線で何百万人も殺した……」とか「ギャラクターの首領として暗躍する……」みたいなセリフ一個入れるよね。そもそもガッチャマンたちが属するISOがどんな組織かも分からない。超国家的組織なのは観れば分かるけれども、それにしたって全てが杜撰すぎる。


超兵器モスコーンの機動を1人の人間の権限に集中させるなボケ組織!


ストーリーの根幹も「任務と人間性に揺れ動くヒーロー」を描いているのはヒーロー物の王道と言えるのだけれど、ベルクカッツェの正体が判明してからのガッチャマンの仲間割れのシーンは、甚平を見殺しにした健を批判するんじゃなくて、そういう指示を出した南部博士を殴るべきだろ! と思った。チームのいさかいを傍観しているだけなんだよね。しかも、この人の立てる作戦って全部行き当たりバッタリか、裏目。南部博士は本当に無能で、モスコーンから30分後にレーザーが発射されるというのは分かっているのに、標的になっている各都市に避難命令を出していないんだよね。無責任すぎ。南部博士を演じた岸谷五朗は精一杯頑張っていると思うけれども、脚本のダメさのあおりを一番食らっている。


監督も監督で、日本ではまともな戦争描写ができる人材ってほんとうにいないなぁと思った。地球の半分がギャラクターの支配下に落ちているのに、そののんきな街並みはないだろ! とか、攻撃が一切利かない相手に軍隊が防衛線を引いても意味ないだろ! とか、ギャラクターもガッチャマンも人数が少なすぎ! とか、地球の半分を支配しているはずのギャラクターに戦略がない(バカっぽい)とか、もうちょっと少ない予算でも『ガッチャマン』の世界観を表現できる工夫の一つくらいすればいいのに、と思った。とにかく大風呂敷で、こぢんまりとした抗争に終始している。あと、他映画のイメージをパクりすぎなのは志が低すぎると思う。『バトルシップ』の歯車兵器はともかく、『AKIRA』のあれをパクるのはちょっとね。


役者に関しては、そんなに悪くないと思った。剛力彩芽は言うほど酷くない。というか、剛力彩芽のキャラそのまんまなんだけれど、それが逆に功を奏しているような気がする。ストーリー上、剛力彩芽のキャラである白鳥のジュンは、いてもいなくてもいいキャラだし。ガッチャマンのメンバーは、それぞれの性格付けが明確で、まあまあ及第点ってところじゃないかと思う。ガッチャマンのビジュアルも、そこは荒牧伸志がデザインしているからか、かなり格好良いものだった。あと、ベルクカッツェがエロいというのは褒めていい点だと思う。


音楽については、やっぱりクライマックスの「科学忍法火の鳥」が出たところで、『科学忍者隊ガッチャマン』のテーマソングを流すべきだったと思う。雰囲気に合わないのなら、21世紀版の格好良いアレンジをしてでも、そこはやるべきだった。


結局、この映画はアニメシリーズに対するリスペクトが不足していると思う。それでもガッチャマンが活躍しているから『ローンレンジャー』より面白かった。ただ、パンフレットを読むと、「本作は『スター・ウォーズ』に例えるなら、『エピソード4』に当たる作品」って佐藤監督が言ってるんだよねぇ……身の程知らず! としか言いようがないけれども。

 

【おまけ】
最近、劇場で映画を観るときはパンフレットを買うようにしているのだけれど、『ガッチャマン』はパンフレットもあんまり出来が良くないなぁと感じた。


パンフレットで監督がスタッフと対談している映画は高い確率で駄作だと思うが、今回も佐藤監督とSF考証の和知正喜と対談していて、言い訳しまくっている。和知正喜は、こんなパクリだらけの映画でSF考証もクソもねーだろうが、と思うけれども、次の仕事はあるんだろうか? あと、ガッチャマンに詳しい専門家に金を払って、テクニカルな文章を書かせるくらいのサービスがあってもいいと思う。アニメ史の中でのガッチャマンの位置づけとか。『ローンレンジャー』は『ガッチャマン』より駄作だったけれど、パンフレットに関しては、その辺りの目配せがちゃんと利いていたんだよね……


あと、パンフレットを読むと、監督もSF考証も脚本家も「隠された設定が……」とか「今回はあえて描かなかった……」みたいなことを言っているけれども、そんなことだからクソ映画って言われるんだよ! もっと、どうやったら映画がちゃんと成立するのか、大人の目にも耐えられるものになるのか、それを真摯に考えて、資金のなさは「創意工夫」と「ガッツ」で頑張れば、今回みたいな映画が出来る確率はグッと減るはずだと思う。資金のなさを「おためごかし」と「子供だまし」で誤魔化すのはやめてください、だ。