『武士の家計簿』
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- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2011/06/08
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- 作者: 磯田道史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/10
- メディア: 新書
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【ストーリー】
加賀藩の算用者として活躍した猪山家を描く。
【感想】
うーん、評価に困る……
良い映画だったというのは解るのだけれど、2時間の映画にしては盛り上がりもなく、繋がりも悪いなぁというのが僕の感想。場面場面は光るものがあるのだけれど、連続したストーリー性が、意図的かどうかは分からないけれどもチグハグだという印象だった。
監督は故森田芳光。僕は実際、この監督の映画をちゃんと観たのははじめてだと思う。とんねるずが主演した『そろばんずく』は観た記憶があるけれども、それもどんな話か忘れてしまったし。原作は新書の『武士の家計簿』で、この本が映画としてストーリー化された理由がまず気になった。ストーリー開発の段階で勝算がなければ、なかなか映画会社としてもGOサインは出せないと思うけれど。
物語は、幕末の加賀藩で算用者として活躍した猪山直之の生き様が描かれる。映画的に面白いなぁと思ったのは前半部分の、猪山直之のパーソナリティーが語られて、経理の不正と算用者として苦しい立場に置かれるところ。この辺りはストーリーが有機的に繋がっていて、猪山直之も昇進するので純粋に観ていて楽しいんだよね。
でも、猪山家の家計簿をつけだして、鯛の絵を観ながらご飯を食べるシーン辺りから、物語が急速にダイジェストになってしまう。大河ドラマ的なので、ダイジェストになってしまうのは仕方がないことだとは思うけれども、一つ一つの出来事が事務的に処理されているような感じが際立っていた。しかも、一つ一つのシーン自体は森田芳光監督のセンスが感じられるものになっているため、余計に気になった。
多分、一番の問題は、子の猪山成之によるモノローグが、誰に向けてのものなのかがハッキリしないところにあると思う。この映画のモノローグは、ただ単に観客に向けられているだけで、ストーリー的な意味は特にないんだよね。子供の目から親を語るというモノローグをするのなら、それが例えば、自分の息子にも受け継がれるとか、海軍内の補給の重要性を認識する契機になったとか、いくらでもストーリーに繋げる工夫の仕方があったはず。
あと、物語的にはハッキリとした山場がほしかった。その一方で、俳優は全員良かった。印象に残ったのは、やっぱり堺雅人と中村雅俊。中村雅俊はこんなに良い俳優だったのか〜と再認識した。仲間由紀恵は年老いてからの肌ツヤがちょっとどうかと思う。
でも、こういう映画がヒットしたというのは、まだまだ映画も捨てたものではないなと思った。地味だけれど、悪くない作品。