『蒸気倶楽部』

文学フリマで購入。秘密結社【銀貨時計】というサークルが出している。


内容は、スチームパンクの世界観(に、大正ロマン的な世界観が混ざっている感じ)の小説が2編に、イラストが4枚。小説はどちらも蒸気に包まれた帝都で暗躍する怪人と、探偵との戦いを描くというもの。僕はスチームパンクはジャンルとして大好きで、自分でも小説を書いたりしていたので、とても楽しく読むことができた。


スチームパンクは、SF以上に舞台設定に労力をかける必要があって、それはビクトリア朝や大正の東京、上海のような「魔都」のイメージをどうやって創り上げるかで、出来の半分くらいは決まってしまうと思う。今作もそれはしっかり出来でいる。それは、多分、ジャンルへの深い理解と愛情があってこそのものだと思う。「僕たちが見たいスチームパンク」をちゃんと解っている感じがした。


ストーリーも、漫画で言えば『怪傑蒸気探偵団』を重厚にした感じで、あの作品が好きな僕としては、「こういうのを読みたかった」という気持ちになった。


でも、読んでいて思ったのは、もう少し物語か本の仕様として余裕があれば、もっと楽しめるのではないかなぁということ。歯車を描くことと同じくらいに、紅茶も描いていれば、さらに趣の深いものになったのでは。もしくは、2作品の間に、箸休め的な掌編を用意するとか、解説のページがあったりしてもいいかもしれない。


ただ、この世界観は続編があるもののようなので、次回作はもっと良いものになっていると思う。