『マネーボール』
- 作者: マイケル・ルイス,中山宥
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2006/03/02
- メディア: 文庫
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原作が傑作だった『マネーボール』の映画版。主演はブラッド・ピット。予算の少ないアスレチックスのGMビリー・ビーンは、型破りでありながら先進的な野球理論を元にチームの立て直しを図るが、スカウトや監督の反発にあい悪戦苦闘。しかし、彼は強引すぎるやりかたで物事を進めていって、ついには結果をものにする……という話。
ビリー・ビーンが将来を嘱望されたメジャーリーガーだったのに、結果を残せなかったことを未だに悔いている描写が胸を打つ。ブラッド・ピットがビリーの役をすると聞いたとき、「ミスキャストじゃないか」と思ったものの、それは杞憂だった。むしろ、原作ではあまり描かれないビリーの家庭が描かれることで、ブラピの魅力も存分に引き出されている。それと、娘の歌声が物凄く良い。
あと、ビリーの参謀役を演じたジョナ・ヒルが、気弱でオタク気質のおデブキャラを好演してて良かった。彼はこの映画でアカデミー賞の助演男優賞を受賞するような気がする。最初は受け答えもたどたどしい彼が、オーナーとの交渉でガッツポーズを握るまでになるのは共感できた。彼の役は最初はディミトリ・マーティンだったらしいが、このキャストの変更は大成功だったように思われる。
弱肉強食の大リーグの世界の悲喜交々が淡々と描かれて味わい深い。もう少し選手の一人一人を掘り下げてもよかったような気がするが、これ以上の尺は難しかったのかもしれない。あと、キモとなるセイバーメトリックス理論はさわりだけの解説だったが、これも映画上仕方がないことだし、効果的に利用されていると思う。それよりもビリーの私人としての姿が描かれていて、娘との関係や離婚した元妻と再婚相手との微妙な距離感が良く表現されていた。
個人的な見所は、アスレチックスで好成績を収めたビリー・ビーンをヘッドハントしようとする、レッドソックスのオーナーとの会話。ウッディ・アレンみたいな顔のオーナーが、優しい口調で「新しいことをすると、業界を動かしている人間が『奴は野球を破壊しようとする』と騒ぐが、そういう奴らは一年目に自分たちのオフィスでレッドソックスの優勝を見て、二年目に自分の安アパートでレッドソックスの優勝を見ることになる」っていうんだよね〜何だか色々なことを連想してしまう。とにかく勇気を貰える作品なので観に行って損はないと思う。