COUURiER Japon

  • COUURiER Japon(10号)

通好みの情報誌、COUURiER Japonは面白かった。巻頭の風刺漫画云々は、風刺漫画自体に面白味が薄かったので、面白い記事とは言えなかったものの、他は全体的に良い仕事をしていたと思う。面白かった記事をいくつかピックアップ。
アメリカ・ロシア 右翼学生たちの過激な「愛国主義」』
ロシアの紅衛兵こと『ナーシ』と、アメリカの右翼的な学生達についてのレポート。ナーシというのは、プーチン大統領を支持する愛国的な若者たちの集団で、いわゆる極右。共産主義ボルシェビキと激しく対立しているらしい。今の若者は、ほとんどがソ連崩壊時に幼年、もしくは産まれた人たちなので、国家に対する危機意識が非常に強いのかもしれない。この世代の動向によって、これからロシアが協調路線をとるか、膨張路線をとるかの分かれ道になると思った。一方、アメリカの右翼的な学生の敵は、学内の左派教師や知識人になる。政治の世界では過去も未来も保守が国を動かしてきたが、学問の世界ではリベラルが優勢なようで、その対立がブッシュの登場とイラク戦争によって一気に顕在化したようだ。授業で教師がリベラル的な言動をすると、それを録音して公開するなど、マッカーシズムの本家本元はやることが一々エレガントだなと思わないでもないが、こういう二元論的な世界観というのは毒になりこそすれ薬にはならないもんだなぁと思った。
思ったついでに、日本の状況はというと、これはもう右翼も左翼もやりたい放題だと思う。右翼の街宣車もどうかと思うが、プロ市民の言動もどうかと思うし、そもそも国とは何かという意識がないまま、右に左にふらついているような気がしてならない。世界中から国境がなくなればいいのに、とジョン・レノンは言ったかも知れないが、「日本国」がなくなればいいのに、とは言っていない。だが、そういう夢を見る人は多いが、「日本国」がなくなれば「中国」か「アメリカ」になるよ、という帰結については大人の事情で明らかになってはいないと思う。
『世にも不思議な世界の離島』
これは面白かった。アメリカ人を神と崇めるジョン・フラウ・カーゴカルトの島や、コモドドラゴンの島、イタリアの刑務所島など、珍しい島々のレポート。カーゴカルトというのは日本語で「積み荷崇拝」といって、島に英雄が現れて富みを満載した積み荷を与えてくれるという信仰のことで、ニューギニアメラネシアで19世紀ごろから始まったらしい。その頃はヨーロッパの植民地だったので、何かそういう信仰が産まれる出来事があったのだろうと思うのだが、(太平洋戦争のときに島にやってきた)アメリカ人を神と崇めるというのはなかなかありそうでなかった宗教だと思う。
この他にも、ポーランドのセクシー下着で村興しをしようという記事や、南アフリカの病院列車の記事、イケアの創業者の記事が面白かった。