『日本の歴史1 神話から歴史へ』

日本の神話とか歴史をどれだけ詳しく知っているか、と言われるとほとんど知らないというのが一般的だと思う。これはまず教育が悪いと思うのだが、やはり神話は(その解釈まで)を教えるべきだし、日本がどういう国であるかということを『古事記』や『日本書紀』を元に学ぶということも大切ではないだろうか。それによって批判や肯定といったものが芽生えるだろうし、「国」という概念がどういうものかという意識も育まれると思う。というわけで、井上光貞著『日本の歴史1 神話から歴史へ』

日本の歴史〈1〉神話から歴史へ (中公文庫)

日本の歴史〈1〉神話から歴史へ (中公文庫)

初版が1973年とかなり古い本ですし、当然のことながらその後の考古学の成果によって、(邪馬台国論をはじめとして)本書の価値も薄れつつあるのですが、記紀の読解の部分は、そもそもこれを読んだことのない人にとっては入門書と言える内容だと思います。例えば神話が何を示しているのか、世界の神話体系との類似点(記紀神話は中国・朝鮮の神話よりもむしろ、ポリネシアインドネシアなどの南方の神話により類似点が見出される)、神話と歴史の境目、そういったものを史料批判や考古史料を踏まえて著述されています。僕が思うに、二十一世になったのだから最新の史料を元にした日本の歴史が書けないものか。学問は細分化が進んだ結果、なかなか全体を見通す目を持った人が少なくなってしまった。弥生時代末から古墳時代にかけての「訳分からん時間」をなんとか整理するような機会はないのかなぁと思う。
もしくは僕が知らないだけか??