『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』

スカパーで鑑賞。



【ストーリー】
人類を滅ぼす黄金軍団を復活させようとする魔界の王子と、ヘルボーイが戦う。


【見所】
クリーチャーとガジェット!
そして、なによりもそれを美しく魅せる演出。
この辺りのリソースとメソッドは、本当にすごいと思う。


【感想】
大満足!


宇多丸師匠の映画評を聞いていたので、面白いと知っていたけれども、ハードルを上げて鑑賞しても十分満足度の高い映画だった。さすが『パシフィック・リム』の監督だ! と思ったね。ちなみに僕の事前の知識は、アメコミ原作ということと、ギレルモ・デル・トロが監督しているということくらい。第1作目のヘルボーイは未見。


でも、話自体は第一作目からそんなに連続するものはないので、この映画から鑑賞しても大丈夫だった。さすがに「ヘルボーイってなに?」という感じだとつらいと思うが。監督はギレルモ・デル・トロで、僕が観た監督作は『パシフィック・リム』の他に、『ブレイド2』がある。『ブレイド2』はウェズリー・スナイプスの俺様映画なので、そんなに作家性が出ているとは思わなかったけれども、それからあれよあれよという間に、クリエイティブな作家性が認知される人になった。


多分、それはヘルボーイの2作品と、『パンズ・ラビリンス』という傑作があったからだと思う。で、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』なんだけれど、この作品は本当に面白かった。ギレルモ・デル・トロの作り込みを堪能できるし、物語的にもハリウッドのアクション映画の良いところが凝縮された美点がある。制作費が80億円くらい掛かっているけれども、日本でこの予算を与えられても同じようなスケール感は出せないはず。


物語は、世界を滅ぼしかねない超兵器を巡る戦いで、これ自体は「いつもの」な話になっている。それを、ビジュアルや演出による作り込みで、これでもかというくらいにブラッシュアップした結果、唯一無二の魅力を持った作品になった。『パシフィック・リム』もよくある話だったし、そう考えてみると、ベネチオ・デル・トロは自身の強みを生かす方向で勝負している。そして、それはおおむね成功している。というか、ベネチオ・デル・トロは映像の作り込みに関しては、もう職人の域に達している。全編、ビジュアルについては文句なしで、特に中盤の木の精との戦いの後で、木の精から垂れ流された樹液から苔のようなものが広がるのは「凄い!」と思った。『もののけ姫』の宮崎駿もこれは思い浮かばなかった勢いだ。


さらに、この映画の場合、トロール市場のカンティーノ酒場みたいなビジュアルや、冒頭の人形劇、ゴールデン・アーミーなどの歯車感満載のガジェットなどに注目してしまうけれども、僕はそれよりも演出の確かさに感心してしまった。特に、王冠の部品を本に隠したところで、その本がどれなのか、本棚の中から自然に目が行ってしまう絵作りにはビックリ。カメラを回したり、パンさせるテクニックも目を見張るものがある。これってハリウッド映画の蓄積があってこそだと思うんだよね。撮影はデル・トロやロドリゲスの映画を担当しているギレルモ・ナヴァロ


魔界の王子と王女が双子で、片方が傷付くと他方も傷付くというアイデアが良かった。これによって、ヘルボーイが王子をぶん殴って殺すと、王女まで死んでしまうわけで、手詰まりな感じを観客に与えることに成功していると思う。これが終盤のハラハラ感にも繋がっている。一応、あのラストの展開は予想できるものだったけれどね。ちなみにストーリーに関しては、2作目ということもあって、キャラクター自体の紹介はかなり端折っている。そのために、話の展開的に飲み込めない部分もあった。特に、死の天使辺りの話ね。


でも、そんなことは些細なこと! 最近、ずーっと見ているスーパーヒーローものの映画の中でも、際立った作品だった。見なければ損と言うくらい。『ヘルボーイ』という作品の知名度が日本では低いのだけれど、それももったいない話だなぁと思った。